【漆の魅力に触れてみよう!】蒔絵を体験してみた
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どーも、ぼくです。
みなさんの家に「漆の器」ありますか?
もしくは、使ったことありますか?
昔はどの家庭でも日常的に使われていた「漆の器」ですが、
近代化が進んで目にする機会も、手にする機会も減ってしまったと思います。
日本人の生活になくてはならない塗料で、9000年も前から使われてきた漆…。
日本が世界に誇る道具であり、原料あり、文化であり、そして芸術でもあると思います。
そんな漆が、僕は大好きでちょくちょく食卓で使います。
<海老芋の雑煮>
<いくらと鮭の親子丼>
「漆の器」のことを漆器(しっき)とも言いますが、漆器でいただくご飯は美味しく感じます。
気のせいとかではなく、手に取った時の軽やかさや、口当たりの良さ、保温性など
和食然りですが、食事との相性は抜群なんです!
蒔絵とは
漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、漆が乾かないうちに金や銀などの金属粉を「蒔く」ことで、その絵や文様を漆器の表面に定着させる技法で、日本独特の美術工芸とも評されます。
蒔絵教室
友人の漆芸家(しつげいか)さんにお誘いをいただきまして、そんな蒔絵(まきえ)を体験させてもらえることになりました。
楽しみすぎて前日あまり眠れなかった!w
会場は目白漆学舎。
目白漆芸文化財研究所が、これまでにない漆の新たな学び舎として運営してる施設です。
専門家向けの講座の他、一般向けの教室やイベントなども開催しています。
出典:目白漆学舎
右に見える引き戸の奥は「漆風呂(うるしぶろ)」と呼ばれる漆を乾かす専用のスペースになっています。
金継ぎ教室の生徒さんの作品が乾燥を待っていました。
漆の器って高いイメージあるでしょ?
そらそうなるわ!ってくらい、めっちゃ手間かかるんです。
どのくらいかって?
蒔絵ができる状態の漆器を作るのに、最低1年かかるらしいです…。
(工程の進行過程)
左から右に進むにつれて、完成形に近づいていきます。
だんだんと艶が出てくるのが、わかってもらえると思います。
一番左が「木地固め(きじがため)」
ちなみに「木地(きじ)」とは、無垢の木から椀の形に彫り出したもののことです。
この木地を作るためには、渇いた木が必要で、木地屋さんという専門の職人さんが何年もかけて素材から作り出すものらしいです。
次に「布着せ(ぬのきせ)」という工程の進みます。
強度を持たせるため、麻布を糊漆(のりうるし)や麦漆(むぎうるし)と呼ばれる接着剤を使って貼っていきます。
糊漆が乾いたら、はみ出た布を切りとる「布払い(ぬのばらい)」、布目の高さ研いで揃える「布目揃え(ぬのめそろえ)」などの工程を経て次の工程に進みます。
(布着せ、布払い、布目揃えなどの工程を経た椀)
その後、「下地付け(したじづけ)」を行います。
生漆に「地の粉(じのこ)」や「砥の粉(とのこ)」を混ぜて、下地のための漆を作ります。
「地の粉」ベースのものを「地の粉地(じのこじ)」、
「砥の粉」ベースのものを「錆(さび)」、両方混ぜると「切り粉地(きりこじ)」というそうで、目指す形によって使い分けるようです。
(下地付けされた椀)
ここまできて、もう一度研いで表面を整えたら、やっと漆を塗り始めます。
「下塗り(したぬり)」、「中塗り(なかぬり)」、「上塗り(うわぬり)」という工程を経て艶のある漆の椀が出来上がります。
下塗りの工程で、塗っては研ぎ、塗っては研ぎを何度も繰り返すことで、上塗りの艶を生み出すことができるのだそうです。
工程一つ一つに意味があり、とてつもない時間と想いを込めて作られていることがわかりました。
(下塗りの椀)
(上塗りの椀)
塗り重ねるたびに光沢を増していくのも漆の魅力です。
このようにツヤッツヤの器面(きめん)ができて、ようやく蒔絵を施すコトができるのです!
そして、ここから始まる蒔絵にも手間がかかるのです。
(蒔絵の工程)
漆で描いた文様に金粉をくっつけて、乾燥させて、さらに漆で上塗りして、また乾燥させて、今度は炭を使って研いで…というね。
めっちゃ手間かかる工程を踏んで完成するわけです。
高いのも頷けます。
今回の蒔絵教室では、上の図の4工程の「2:蒔絵粉を蒔く」までやります。
3、4の工程は蒔いた後に乾燥させてからでないとできないため、その先の工程は、工房の漆芸家さんたちにお任せします。
ちなみに、今回蒔絵を施すのはカレースプーンです。
漆を漉す漆芸家の先生。
漆の中に有る微細なゴミ等を漉し紙を使って漉します。
滑らかにするためには、2回漉す必要があるそうです。
素人のぼくらのために、本物の道具と素材と技術で向き合ってくれる姿勢に感動しました。
早速、絵を描くぼく。
めちゃめちゃ難しい。
独特の粘性を持った漆を筆に取り、思いどおりの線を描く作業はゆっくりでないと線が掠れてしまうため、時間と神経を使います。
前日にモモと話し合っていて、下の写真のような金粉をグラデーションした蒔絵にする予定だったのですが、渡された筆が細かったので急遽絵柄を書くことに…。
いろいろ思案してるうちに時間がなくなってしまい、ベタですが「千鳥」を描くことにしました。
(後で聞いてみたら、グラデーションも筆を変えればできたそう…次回はそちらにチャレンジしたい…。)
絵を描き終わったら、金粉を蒔きます。
「粉筒(ふんづつ)」という道具を使って、金粉を蒔いていきます。
薬指で弾くようにして蒔いていくのですが、「蒔くのは上手い」と褒められました。
「蒔くのは…」です。(笑)
蒔き終わったら、「毛棒(けぼう)」という金粉を払うための筆を使って、余分な金粉を払い落とします。
露わになる拙い千鳥ちゃん。
でも、蒔絵が露わになる瞬間は感動しました!こんなんでも感動しました!
僕にとっての初蒔絵ですもん。
モモコの分も作ったので、夫婦スプーンです。
ちょっと不恰好だけど、ご愛敬です。
1ヶ月後を目処に、完成したスプーンが自宅に届きます。
目白漆学舎のコト
目白漆学舎では、定期的に蒔絵教室や金継ぎ教室などを開催しています。
もし興味があれば、是非参加してみてください。
(お問い合わせはこちらまで:目白漆学舎)
「モノづくり」に真摯に向き合う姿勢を体験すること、感じること、知ることは
失ってしまったり、希薄になってしまったりしている有機的な繋がりを取り戻すことだと思います。
花が咲き実を結び、果実をおいしくいただくためには、枝葉を支える根っこが肝要だったりします。
モノづくりもきっと同じで、作る人の後ろには、原料や素材を作る人、それを取るための道具を作る人がいるわけです。
使う人あっての物種だとは思います。
だからこそ、どんな想いで使うのか、どれくらい理解して使うのかが大事で、それによって僕たちは色々なものを選んでいけるんだと思います。
漆の世界は、そういう有機的な繋がりを感じやすい場所だと思います。
とても魅力的な世界で、刺激的な体験ができることは間違いないので、少しでも興味があれば、目白漆学舎の門を叩いてみることをお勧めします。